タイヤのグリップ力について ~コーナリングやブレーキングの限界についての理論~

第6回欲張り朝練の急制動の記事にて、急制動を行う際、真っすぐ進みながらブレーキングすべきであることと、タイヤをロックさせないことが重要であるとお伝えしました。

その理由は別記事でということで、こちらがその理論についての記事になります。

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タイヤの使い方を理解することが重要

そもそもタイヤの役割は何か?

実は4つだけです。

1.加速

2.減速

3.右への操舵

4.左への操舵

この4つの仕事をこなすのに、タイヤのグリップ力を配分して使っているわけです。

ダウンヒルで、ブレーキングしながら右へコーナリングするのであれば、減速+右への操舵というタイヤの使い方をしていることになります。

ここで重要なのは、タイヤのグリップ力には限界値があるということです。

この限界値を超えるとタイヤはロックし、本来発揮できるグリップ力以下の仕事しかできなくなります。

分かりやすいイメージ画像がこちら。

グリップ力の限界値を表しているのが、円形の箇所です。

円の内側は、グリップの限界内で、タイヤがロックしない領域です。

円の外側は、グリップの限界を超え、タイヤがロックする領域です。

グリップ力を100とするなら、直進しながらロック寸前のフルブレーキをすれば、減速側に100を使うことになります。

右に曲がりながら、軽くブレーキングをするなら、右に50、減速側に20で、合計70を使うといった具合です。

もし、減速側に110を使ったとするなら、限界の100を超えてしまうので、タイヤはロックし、グリップ力そのものが小さくなり、制動距離がのびることになります。

この状態が、急制動の練習で起こっていた「後輪がロックし、止まれない」という状況になります。

フルブレーキングは直進状態で行うべきであるという根拠

急制動を行う際のコツとして、「直進状態でフルブレーキングする」という内容がありましたが、その根拠はこの理論にあります。

操舵に10だけでも力を使ってしまうと、ブレーキングに使える力は90に減ってしまうんですね。

なので、タイヤがロックしやすくなる。

最短距離で停止するためには、ブレーキングに100の力を使うのがいいのは明白。

故に、直進状態でフルブレーキングすべきなのです。

また、タイヤの使い方とは違いますけど、直進体勢でタイヤがロックしても、ブレーキを戻せば再度グリップしてコケることはありません。(何かにぶつかるかもしれませんが・・・)

しかし、曲がりながら後輪がロックすると、体勢が崩れてしまい、そのままコケる可能性が高くなります。

後輪のグリップがなくなり、そのまま横に倒れてコケるのであればマシな方。

一番怖いのは、「ハイサイド」という状態になることです。

ハイサイドは、グリップがなくなりスリップ状態になったタイヤが、いきなりグリップして車体が立とうとする動作をすることです。

言葉では伝わりづらいですね(^_^;)

こういう転倒の仕方です。

身体が前に投げ出されてキケンが危ない。

ロードバイクのタイヤは細いですし、限界が低いのでなかなか起こらない現象ではありますが、起こったらシャレにならない・・・

プロレベルのロード選手が、ダウンヒルで落車して命を落とすニュースが極まれにありますけど、こういう現象が起こり、横に倒れることができず直進してしまったとか身体が前に投げ出されてしまったからなのではと私は考えています。(もしくは、減速側に100以上の力を使ってしまい、ハンドルを曲げても曲がらなかったか・・・)

ですので、操舵をしながらのフルブレーキングは行わないのが鉄則です。

コーナリングはどのような配分が正解?

今までの話からすると、もちろんながら「操舵に100のグリップ力を使う」が正解となりそうですが、それは理論上のお話しです。

この図のFのポイントが一番グリップが高く、速く走れる状態です。

が、実際、限界ぎりぎりのグリップ力を使うことは危険なのでやめましょう。

少しでも限界を超えれば、落車確定です。

そんな無理はしたらダメです。

そもそもグリップ力の限界値は、刻一刻と変化していきます。

コーナリング中にある地点では100が限界でも、1秒先では50が限界になることもあるわけです。

例えばですけど、コーナリング中にいきなり砂が浮いている場所があったら?

60のグリップ力を使ってコーナリングをしていた場合、50の場所を通過する瞬間にタイヤはスリップします。

ですので、視界の悪いコースを状況が分からないままに速くコーナリングしようとするのはご法度です。

初見のコースなどはゆっくり走るのが吉。

また、初見でなくとも、自分がまだ余裕をもっていけるというレベルでコーナリングするべきかと思います。

グリップ力の限界値に影響を与える要素とは?

タイヤをロックさせない、スリップさせないためには、どのような要素でグリップ力が弱まるのかを知り、感覚だけでなく、頭でも大体のイメージができるようにしておくべきです。

グリップ力の限界値に影響を与える要素は以下の通り。

1.タイヤ自体のグリップ力

→前に載せている図の円形自体の大きさを大きくするには、グリップ力の高いタイヤを選択しましょう。

私のおすすめは、コンチネンタルのGP4000S2とVittoriaのCORSA G+です。

2.路面の摩擦係数

→砂が浮いていたり、ウエット路面だったりすると、摩擦係数は下がり滑りやすくなります。

前に載せている図の円形自体の大きさが小さくなってしまい、これを大きくすることは難しいので、スピードを落とすなどで回避するしかありません。

3.タイヤを地面に押さえつける力(荷重)

→この荷重が、後輪をロックさせやすくする原因です。

1番身近な荷重を感じる場面というのが、車に乗っている時に急ブレーキをかけた時です。

その際、車体前方が沈み込みますよね?

これは、荷重移動により、総重量の前輪と後輪にかかるバランスが前輪側に寄るために起きます。

前輪ではタイヤを地面に押さえつける力が増加(限界値が増大)し、後輪では押さえつける力が減少(限界値が縮小)します。

数値化すると、前輪が140、後輪が60になるようなイメージです。

この数値を見れば、後輪がロックしやすいのは間違いようもないことですね。

これをなるべく防ぐために、急制動時にはサドルの後ろに腰を落としましょうと言っているわけです。

そして、もうお気付きの方も多いかもしれませんが、前輪のグリップ力は通常時よりも大きくなりますので、急制動の場合の前輪側のブレーキの引きは、強めに行うべきということになります。

ただし、前輪がロックするのが1番怖いんです、実は。

後輪がロックするのは、まだ立て直すことが可能ですけど、前輪のロックは一瞬で転びます。

特にコーナリング中に前輪がロックしたら、100%落車します。

ですので、前輪のグリップ力をフルに使うことは考えすぎない方がいいです。

4輪であれば、1輪のタイヤが破綻しても他の3輪がカバーしてくれますが、2輪はカバーしてくれませんからね・・・

まとめ

結局のところ、不安定な2輪であるロードバイクにおいて、無理なスピードでのコーナリングや急制動は避けるべきということです。

ただ、どうしても必要となった場合、この記事に書かれている理論をもって、現状においてどう行動するのが1番被害を小さくできるのかを導き出せるように引き出しを増やすことは重要だと思います。

考えたくもないことですが、意を決して自らコケることが最善の策ということもありえるかもしれません。

やはり、そのような究極の選択をせまられる状況になる前に、未然に防ぐことを考えながらロードバイクを楽しみたいものです。

同じような理論的なお話をどうぞ~

脱初心者必見!!ロードバイクにおける空力(エアロダイナミクス)の重要性について


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コメント

  1. 5分で劇落ちマン より:

    あの、ハイサイドって回復した駆動力で起きる物なので、コーナーリング中には駆動力を事実上利用できない自転車では原理的に「ハイサイド」はおきません。
    自転車でそれっぽく見える現象があるとすると低速での切れ込み前転や単なるフロントのスリップダウンです。

    • AKIRA より:

      コメントありがとうございます。
      こちらのYoutubeの動画にある落車の仕方もそれっぽく見える現象ということでしょうか?

      https://www.youtube.com/watch?v=8Q4K9Hrogz0

      • 5分で劇落ちマン より:

        ハイサイドはあくまでもパワースライド状態(駆動輪の空転による動摩擦でコーナリングフォースとバランスを取る)から急激にグリップを回復させてしまうことで逆操舵状態の前輪を押し出す力が発生するものです。基本的に前輪の接地面を軸に、車体はイン側に傾いたまま「駆動力で」発生します。
        動力的にパワースライドはロードバイクの運用上成立しないので、原理的にハイサイド自体発生し得ません。

        記事中のオートバイの動画も車体を立てた時点で発生しています。これも単なる切り返しの失敗による切れ込み前転でハイサイドではありません。
        返信で上げられたほうはリアロックによるテールスライドから速度が落ちたところでグリップが回復し「後輪の設置部位を軸に」「慣性モーメントで」アウト側にひっくり返っているだけです。ハンドルは切れ込んでいるのでは無く、リアが流れた時点でバランスをとるため無意識に自分で切っているだけです。
        これはブレーキターンの失敗と同じ物理現象で、駆動力が前輪を切れ込ませるハイサイドとは全く別物です。
        ブレーキターンとパワースライドをある程度コントロールできる経験(要はその過程で両方食らった経験)がなければ上記の二つは外観上区別できないのが普通なので、Youtubeに上げられている「ハイサイド」動画でも、一般の走行映像では大抵ハイサイドではありません。
        以下の2:54~あたりは珍しく正しい?ハイサイドです。2:55付近で立ち上がりで少し流れすぎたのをちょっと戻した瞬間に飛んでいます。逆操舵状態もそれと意識しないとわからない程度でも発生します。
        https://www.youtube.com/watch?v=SvEhFaRDn58

        • AKIRA より:

          コメントありがとうございます。

          おそらく、「ハイサイド」という言葉の定義についてだけの問題かと思いますが、教えてください。

          私がグーグル検索で「ハイサイド バイク」で検索した結果の上位10サイトほどを参照してみたのですが、「後輪の駆動力を発端とする」と定義しているサイトはどこにもありませんでした。
          私のハイサイドの定義の認識は以下の通りです。

          “後輪がグリップを失い、「なんらかの理由により」後輪が急激にグリップを回復してしまい、後輪が滑っていた方向(バイクの外側)にライダーが飛ばされる現象”

          この定義自体が間違っているということなんでしょうか?
          今後のための知識として正しいことを知りたいので、ソースとなるリンクなどを含め、コメントいただければ幸いです。

          • 5分で劇落ちマン より:

            ネットが普及する前からの常識なので明確なソースを求められても困るのですが、

            以下の中頃
            http://home.kingsoft.jp/news/transport/lrnc/16826048.html
            >一概にはいえませんが、たいていの場合はコーナーの立ち上がりの、アクセルをあけている状態で、リアタイヤにパワーがかかり過ぎて滑りはじめた時に発生します。

            原義の残渣がこのあたりです。
            パワースライド状態からのグリップ回復で何が困るのか、という考察がことごとく省略されているのと、ブレーキターン失敗系や切り返し失敗系まで「あ~、俺ハイサイド食らっちまったわ~」的な勘違い下手自慢で誤用が拡大再生産されているので「一概に」とか「典型的」等のexcuseが付いてしまっていますけどね。その機序としての「駆動力」というタームが出てこないだけの話です。
            そもそも自転車とオートバイでは人間と車体の重量比が完全に逆で、オートバイにはさらに駆動力という要素まで加わります。それが「ハイサイド」が起きたときに人間が全くなす術が無い根本的な理由です。例示された/したオートバイの動画の「ハイサイド」はそれに由来しているのでいずれにしてもロードバイクでは起き得ません。
            一方、コメント中で挙げられた自転車での転倒状況を自転車業界では「ハイサイド」と呼ぶのであれば、それは自転車業界のローカルタームとして尊重すべきでしょうし、それに無粋な横やりを入れる事自体がモータースポーツとの関わりの方が深い私の無知故なので私のコメントは全て削除して頂いて結構です。
            ただ、その「ハイサイド」の例示としては物理現象として機序の異なる記事中のオートバイの動画(特にこれはリアがロックしているわけでも無い)ではなく、コメントで挙げられた自転車の動画の方が適切なのでは無いか、とは思います。

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  3. 5分で劇落ちマン より:

    度々申し訳ありませんが、ブレーキターン失敗系、というのはこの動画の終盤3:37~あたりのようなものです。

    https://www.youtube.com/watch?v=DnpExI4wxL8

    リアがロックしたあとグリップが回復して車体が転回方向と逆に倒れる、という自転車の転倒動画と全く同じ挙動です。これを「ハイサイド」と言うのはモーターサイクル的には完全に誤用です。

    ちなみにこの動画はその挙動を利用して車体を起こしてアウト側のサイドスタンドで自立、人間は飛び降り、というネタです。

    • AKIRA より:

      5分で激落ちマンさん、長文の解説コメントをいただきまして、ありがとうございます。

      「ハイサイド」についての解説で、ここまで突っ込んだ解説は検索上位サイトにはなかったので、おそらく正しいことをおっしゃってるんだと思っています。
      モーターサイクルに深く関わったことのない私には、正誤の判断はできません。
      そして、悲しいかなこのように解説しているサイトがなかなか見つからないということが、どうしても信憑性を揺らがすということだけはご理解いただければと思います。
      そのためのソース提示のお願いでした。

      私がコメントで添付したロードバイクでのハイサイドという動画も、自転車業界のローカルタームということではなく、前のコメントに記載した私の認識であるハイサイドの定義に照らし合わせれば、ハイサイドと判断できると思ったまでです。
      ハイサイドを解説しているサイトも、「モーターバイクおよび自転車で起こることがある事象」と解説しているサイトが多かったですしね。
      グーグル等の検索でヒットするサイトが正しくない情報ばかりという認識なのであれば、モーターサイクル業界の方々で、正しい情報をネットの世界に公開すべきなのではないかと思いました。
      それこそ、こちらにコメントいただいた内容をそのままご自身のブログ等で公開されたらよいのではと思ったぐらいです。
      というぐらい、練られたコメントだと思っています。
      消すのはもったいないので、そのまま公開させておいてください。

      ロードバイクのハイサイドとして紹介されていた動画と、リンクいただいた動画が同じ挙動というのは分かりやすいですね。
      https://www.youtube.com/watch?v=DnpExI4wxL8
      テクニックとして、意図してやっているか否かの違いはあるでしょうが、起こっている事象は同じだと思いました。