以前、筋収縮の種類についての記事をアップしましたが、今回は、関節の種類と役割について、知っておくと得をするかもしれないという概要を記事にしてみたいと思います。
「関節のことを知って何になるの?」と思うかもしれませんが、知れば「あぁ、そういうことか」と思えたりすることが増えておもしろいです。
腰痛を治すのに、腰をマッサージしたり、腰の動きを意識してもあまり効果がないということが、ちょっと理解できるかもしれません。
関節には、動くための関節(モビリティジョイント)と安定させるための関節(スタビリティジョイント)がある
筋収縮についての記事をご覧になられた方は、「関節は骨と骨を繋ぐ箇所で、筋肉の収縮で骨を動かすためにあるのでは?」と思われるかもしれません。
確かに、肩関節や股関節は身体を動かすための関節です。
しかし、人間には、大きく分けて11の運動に関する関節があります。
※実際には、もっとあるんですけど、運動するにあたりということで・・・
その中には、身体を安定させるために存在する関節も含まれます。
代表的な部位は、腰部(仙腸関節/腰椎)ですね。
「腰部って、腰を回すような運動、野球のバッティングやゴルフのスイングなどで、ごりごり動いてない?」と思ったりしません?
私はそのように思ってました。
だって、「腰をグッと回せ~」とか言われましたもん、昔。
しかし、腰部は、上半身を回す動作は苦手。
構造上、回すことはできないと言ってもいいと思います。
では、腰を回すの正体は何かというと、股関節がグリっと回っているんですね。
下半身が股関節によって回り、その後、上半身が胸椎によって回っていくというのが、腰を回すという動作です。
実際は、腰は動いていないんですね。
股関節のように、伸展/屈曲、内転/外転、内旋/外旋と3Dに動けるような動ける関節をモビリティジョイントと呼びます。
腰部のように、安定のために働く動けない関節をスタビリティジョイントと呼びます。
モビリティジョイントとスタビリティジョイントは、交互に配置されており、スタビリティジョイントで安定させ、それをベースにモビリティジョイントが動作するという連動方式で成り立っています。
これを、協同と呼びます。
身体を動かすには、以下の3つが揃わないと上手に動かせないということです。
1.スタビリティジョイントの安定性
2.モビリティジョイントの可動性
3.スタビリティジョイントとモビリティジョイントの協同性
この理論をジョイント・バイ・ジョイント理論といいます。
次は、モビリティジョイント、スタビリティジョイントの特徴について。
どの関節がモビリティジョイント?
モビリティジョイントに属する関節は以下のとおりです。
(順番は、身体の下部からはじまり上部へ)
・足関節(足首)
・股関節
・胸椎
・肩関節
・手関節
・頸椎
ロードバイク乗り的には、「膝関節は?」と疑問に思うところ。
実は、膝関節はスタビリティジョイント、動かすのは不得意な関節なんですね。
どの関節がスタビリティジョイント?
スタビリティジョイントに属する関節は以下のとおりです。
(順番は、身体の下部からはじまり上部へ)
・足部
・膝関節
・仙腸関節/腰椎
・肩甲胸郭関節(≒肩甲骨)
・肘関節
膝関節、肘関節はスタビリティジョイントだった・・・
膝関節・肘関節は、屈曲/伸展に関しては可動域の大きい関節ですが、内転/外転、内旋/外旋に関しては、ほぼ動かすことができない関節です。
手をクルクルと円を描くように回す動作をよく観察してみると、肘関節は屈曲/伸展のみ行っており、肘関節よりも肩関節がゴリゴリと動き、手関節がクルクルと回っているのが分かると思います。
膝関節も同じですね。
膝関節は、屈曲/伸展しか行えません。
肩関節と同様の働きをするのが股関節で、手関節と同じ働きをするのが足関節というイメージです。
膝の痛みに悩まされるロードバイク乗りは多いですが、それは膝関節がスタビリティジョイントであり、可動域が小さい関節であることを正しく認識できておらず、無理に膝関節を動かそうとしてしまったり、周囲の筋肉がカチコチに固まってしまっていて、膝関節も道連れに動かしてしまうことに起因している可能性が高いかもしれません。
もしくは、関節の位置の認識すら間違えている可能性もあります。
脳が間違った認識をしたまま、動作させようとすると誤った動きになるのは当然といえば当然です。
脳からの命令で、身体は動きますので。
みなさん、肩関節や股関節の位置、正しく認識できてますか?
意外に身体の内側に入り込んだところにありますよ??
話が逸れました・・・
膝関節の痛みの要因として、大腿筋膜張筋の過緊張が取り上げられることがありますが、これもペダリングを真っすぐ行うことができず、膝の軌道が左右にブレてしまい、腿の外側にある大腿筋膜張筋を過度に引っ張りすぎてしまうことで炎症が起きるという仕組みです。
その原因は、膝関節がスタビリティジョイントであり、屈曲/伸展以外には可動できないこと+モビリティジョイントである股関節が真っすぐに屈曲/伸展を行えていないことである可能性が高いです。
膝関節の動きに自由度があれば、股関節の動作不具合を吸収してあげることもできるかもしれませんが・・・
このように膝の痛みの原因が、少し離れた場所にある股関節の動きにあるということも十分にありえるわけです。
さらに突き詰めていくと、股関節の動きを悪くしているのは、上半身の硬さにあるかもしれませんし、足首の硬さやズレにあるのかもしれません。
ある部位で満足な動作ができなかったことを他の部位でかばうような働きをすることを代償動作といいます。
モビリティジョイントの動作不具合が、各関節で代償動作を行いながら、最も遠くにある部位に痛みとして現れるということもあるわけです。
猫背は、代償動作の連鎖が生み出しているかも?
猫背による肩こりは、いい例かもしれません。
猫背も様々な要因があると思いますが、1つ例を挙げてみます。
1.足裏の重心が前過ぎる。ロードバイク乗りにおなじみの拇指球あたりに重心を置いてしまう
2.身体は前に倒れようとするので、膝を少し曲げ、お尻を落とすことでバランスをとる
(多くの場合、骨盤後傾もセットで発生するはずです)
3.すると、上半身は後ろに倒れようとするので、胸椎を前に曲げることでバランスをとろうとする
4.胸椎を前に曲げる=猫背が完成
5.猫背によって背中側の筋肉が過度に前へ引っ張られてしまい、肩こり発生
スマホをよく見る方であれば、さらにストレートネックが加わってダブルパンチなんてこともあるかもしれませんね。
上の例のように足裏の動作不具合(足関節の過度な背屈)が、首・肩周りに影響することもありえるわけです。
ちなみに、立つ・歩くレベルでの足裏の重心は、足裏の内側のくるぶしの下あたりにあるそうです。
拇指球だと前荷重過ぎるんですね。
スポーツをする上では、拇指球の上に重心を移動させる(前荷重にする)ことで、瞬発力のある動作ができるようになるわけですが、そのためには、膝を深く曲げ、股関節を曲げ、骨盤を前傾させるというバランスを保つための普段は行わないような動作が必要になるわけです。
少し話が逸れましたが、猫背の方は、足裏の重心位置を見直すことで改善する可能性がありますので、少し意識してみてもいいかもしれません。
身体の動作は、全身が複雑に連動して行われている
身体の動作は、さまざまな部位が連動して行われているということを認識しているだけでも変わってくることがあるかもしれません。
痛みが発生したり、動作不良を感じたりした際、直接的な部位を気にするだけではなく、他の部位を意識することができ、異常を発見できるかもしれませんし、改善の糸口を掴めるかもしれません。
身体異常の修正は、スポーツトレーナーなどのプロである治療師にお願いするのが1番だと思いますが、自分自身の状況を上手に伝えるためにも関節や筋肉の働きなどを知っておくことはマイナスにはならないかと思います。
その1つとして、関節には動かすことが得意な関節と苦手な関節があるということを頭の片隅に置いておいてもよいのではないでしょうか。
ちなみに、ロードバイクのトレーニング本として発売されているこちらの本は、身体の動作に焦点を当て、どの筋肉・関節をどのように動かせばロードバイクを楽に速く走らせれることができるかが、分かりやすく解説されていました。
当記事を最後まで読まれるような身体の動作に関心がある(と思われる)方には、ぜひ読んでみていただきたいです。
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