空気圧を上限値まで入れてませんか?ロードバイクタイヤの空気圧の適正値について

ロードバイク用タイヤの空気圧、パンパンに入れている方いらっしゃいませんか?

 

私も最近になって気付き、タイヤの空気圧について調べ、試したことで確信したのですが、空気圧には適正値というものがあります。

 

最大空気圧まで空気を入れるのはおすすめできません。

 

そんな空気圧のお話。

 

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タイヤの空気圧には、ほどよい適正値が存在します!!

 

私は、つい最近まで「タイヤをパンパンにして固くすれば、転がり抵抗が小さくなって速く走れる!!」と考えていました。

 

どのメーカーのタイヤであっても規定されている最大空気圧を入れていたんです。

 

ところが、ある日の朝のこと。

 

寝坊してしまい、空気を入れる余裕がなく、そのままじてつーへ向かうことに。

 

いつものごとく通勤路を走っていると、路面からの衝撃がまろやかで、スピードも出る!!

 

まぁ、追い風もあってのことでしょうけど、少なからずスピードが遅くなっているようには感じませんでした。

 

私の足回りのメインの組み合わせは、シャマルウルトラ+GP4000S2(25C)+Vittoria Latex Tube です。

 

このヴィットリアのラテックスチューブが、前日夜20時ごろから翌日朝の7時ぐらいまでの間に1BARほど空気が抜けるんですね。

 

この気付きの日の前日、GP4000S2の最大空気圧である8.5barを入れていました。

 

気付きの日の当日、おそらく空気圧は7.5bar前後だったかと思われます。

 

なのに、乗り心地はよくなるわ、スピードも出ているように感じるわで、「最大空気圧を入れるのは間違っているのではないか?」と考え直した次第。

 

インターネットで調べると、「適正値を入れなさい」という解説サイトが大量に表示されました。

 

ここで、適正値を知るのにいいアプリを発見。

 

Vittoria iTire Pressure

 

ヴィットリアが提供しているスマホ用アプリです。

 

タイヤのケーシング(TPI)、クリンチャーかチューブラーか、ライダーの体重+車体重量、路面コンディションを選択し、計算を実行すると適正空気圧を算出してくれるというもの。

 

私がいまボラワン50に履かせているのが、Open Corsa G+ のチューブラーなので、実際に計算してみるとこのような結果になりました。

 

フロント:8.6BAR/125PSI

リア:9BAR/130PSI

 

もちろんのことながら、上記の空気圧は、最大空気圧とは異なります。

 

見ての通り、最小は7BAR、最大は12BARまで対応しているタイヤです。

 

では、なぜ、適正空気圧=最大空気圧とはならないのでしょうか?

 

タイヤの抵抗(スピード)に関わる要素とは?

 

タイヤにかかる抵抗はこの3つです。

 

1.転がり抵抗(87%)

2.摩擦抵抗(10%)

3.空気抵抗(3%)

 

ほぼ、転がり抵抗がすべてと言って差し支えないレベル。

 

そして、転がり抵抗は空気圧に左右されると考えていたのですが、実はそうではないようなのです。

 

多くの解説サイトで、タイヤの空気圧を上げれば上げるほど、転がり抵抗は減るという実験結果が掲載されています。

 

詳しくは、こちらのサイトを見てみてください。

 

Bicycle Rolling Resistance | Rolling Resistance Tests
Bicycle Rolling Resistance publishes detailed reviews and articles about mountain bike and road bike tires, which have been tested on our rolling resistance rol...

 

様々なメーカー別、種類別、サイズ別の転がり抵抗についての実験結果が記載されています。

 

ちなみにトップは、Vittoria Corsa Speed のチューブレスレディがダントツだったりします。

 

チューブレスは、使用方法が定着していないこともあり、普及していませんが、近い将来、覇権を握るかもしれませんね。

 

話が逸れました。

 

空気圧別の転がり抵抗値がわかりやすいのは、こちらのページの下部の図です。

 

Continental GP4000S II Comparison: 23, 25, 28 mm Compared – Bycycle Rolling Resistance

 

このグラフを見ると、規定空気圧の最大を入れるのがよさそうに見えますが・・・

 

しかしながら、ヴィットリアは、適正空気圧は制限内ギリギリではないと公式に発表しています。

 

ということは、他にも要素があるんですね。

 

そこで、最近に発表されたある実験結果から分かった新たな要素が有力になってきます。

 

タイヤに関係する新たな抵抗要素、インピーダンス損失

 

実験を行ったのは、ポンプメーカーとして有名なSILCAという企業。

 

SILCAの公式ブログに掲載された、2016年7月の記事で掲載された内容に登場したインピーダンス損失がその要素です。

 

該当記事がこちら。

 

ROLLING RESISTANCE AND IMPEDANCE – Silca Blog

 

内容は英語で書かれていますけど、グラフを見るだけでも雰囲気が掴めるかと思います。

 

最初に掲載されているグラフは、先に紹介した転がり抵抗の実験サイトと同じ内容です。

 

空気圧が上がれば転がり抵抗は減るという内容のグラフ。

 

このグラフ、走行抵抗がほぼない、ローラー上でのデータです。

 

次に載っているグラフは、アスファルト路面上を実際に走った場合の転がり抵抗データ。

 

空気圧が110PSI(7.5BAR)あたりから、急激に転がり抵抗が増えていることが分かります。

 

この路面の粗さと空気圧の高さの関係によって発生する抵抗のことをインピーダンスと名付けています。

 

また、急激に転がり抵抗が増加しはじめる分岐点をブレークポイント内圧と定義しています。

 

いままでは、転がり抵抗の大部分はケーシングロスによるものと考えられていたとありますね。

 

空気圧を上げることで転がり抵抗が小さくなるのは、ケーシングロスが小さくなるためと記載されています。

 

ケーシングロスとは、タイヤの形状変化によって、ケーシングが移動し、その際に運動エネルギーが熱エネルギーに変換されてしまい、減速する現象とのこと。

 

ヒステリシスロスという用語と同じ意味合いなのではないかと思われますが、根拠となる解説等は見当たりませんでした。

 

ちなみにヒステリシスロスというのは、23Cタイヤ(細いタイヤ)より25Cタイヤ(太いタイヤ)の方が、転がり抵抗が小さくなるということが話題になった際、有名になった用語です。

 

転がり抵抗の9割は、タイヤの変形によって発生するということ、23Cタイヤと25Cタイヤだと25Cタイヤの方がタイヤ変形量が少ないことが分かり、現在の25Cタイヤ全盛時代に移行する流れに弾みをつけた要因となりました。

 

こちらの画像が有名になりましたよね。

 

 

厳密には、接地面積自体は変わらないのですが、ケーシングがよじれる範囲が広くなるためにヒステリシスロスが大きくなってしまい、抵抗が大きくなるようです。

 

余談ですが、25Cタイヤが優位という話は、ホイールを17Cにしないと適正化されません。

 

25Cタイヤ+17Cホイール化することで、タイヤ重量の増加やホイール重量の増加もセットでついてきます。

 

それ故に、ホビーライダーレベルであれば23Cタイヤ+15Cホイールの方がよいのでは?という議論が尽きなかったりします。

 

私は、25Cタイヤの方が転がりがよいと実感していますし、最先端の考え方が好きなので、25Cタイヤをおすすめします。

 

ロードレース界では、28Cを採用する流れすら登場していますしね。

 

話が脱線してしまいました。

 

重要なことは、ケーシングロス=転がり抵抗という従来の考え方ではなく、新たにインピーダンス損失も考慮した空気圧の適正値を導き出すべきだということです。

 

ケーシングロス+インピーダンスロス=転がり損失

 

元記事の表現では、以下のようになっています。

 

Theoretical (steel drum) Crr Plus Impedance = Total Rolling Loss

 

ちなみにTheoretical (steel drum) Crrとは、理論的転がり抵抗値と訳すことができるので、ローラー上で走った場合の路面状況の影響を受けない、理論上の転がり抵抗値ということだと思います。

 

ですので、分かりやすくケーシングロスと置き換えてみました。

 

ということで、ケーシングロスとインピーダンスロスの和によって、転がり抵抗(転がり損失)が確定するということです。

 

そして、ブレークポイント内圧を分岐点として、ケーシングロスの減少<=インピーダンスロスの増加ということになり、転がり抵抗は増大する方向に転換してしまいます。

 

そのものずばりの結論を書くのであれば、空気圧を最大まで高くすると遅くなるよ!!ということ。

 

 

スムースな路面において、10PSI高くなる(110PSI→120PSI)ことで、10W失うというなかなかショッキングな数値です。

 

他に4点、ポイントとなることが箇条書きされています。

 

1.タイヤの適正空気圧は、ライダー+車体の総重量、タイヤサイズ、コース条件によって決まる。

→Vittoriaの空気圧算出アプリの要素と同様です。

 

2.ブレークポイント圧力よりも数psi低い圧力を設定する方が、ブレークポイント圧力より高く設定するよりも転がり抵抗に対する影響が少ない。

→空気圧は高過ぎるよりも低い方がまだ影響が少ない。

 

3.粗い表面または柔らかい表面は、より急なインピーダンス線を描き、転がり抵抗をより高くし、適正空気圧をより低くする。

荒れた路面では、空気圧をさらに低くすべき。

 

4.より柔軟なタイヤは、適正空気圧からの誤差をより許容する。

ハイエンドクラスの性能がよいタイヤは、ごまかしが利く。

 

ちなみに、この実験はライダー+車重が86kgで、ホイールはZipp 404 Firecrest を使い、タイヤはGP4000S2の25Cで行われたとのことです。

 

カーボンクリンチャーでコンチ25Cを履いて、体重76kgぐらいのライダーが乗る想定で、110PSI(7.5BAR)ぐらいが分岐点になると考えると、実体験にかなり近い数値になる気がします。

 

私が使用したことのあるハイエンドタイヤの最適空気圧については、こちらの記事を参考にしてみてください。

 

 

MTBやシクロクロスなどのオフロードを考えてみると・・・

 

難しいことをいろいろと書きましたが、我々ロードバイク乗りが感覚で気付いていることを数値化して証明してくれたということです。

 

よく考えてみれば、ロードバイクでオフロードを走ろうとしても、まともに進みませんよね?

 

ロードバイクタイヤの空気圧でオフロードを走れば、突き上げがすごすぎてタイヤが接地せず、まともに転がりません。

 

オフロードであれば、シクロクロスやマウンテンバイクで走った方が速いです。

 

シクロクロスやマウンテンバイクのタイヤ空気圧は、1.8BAR~2.3BARとかなり低く設定します。

 

コーナリングでまともにグリップしませんし、直進することもままならないというのが理由でしょう。

 

オフロードを想定すると、路面状況の変化が極端すぎて「空気圧を下げるのは当たり前」となりますが、アスファルト路面だと「大して変わらないんじゃないの?」となるのが不思議なところ。

 

公道であれば、国道なら比較的スムースな路面でしょうし、酷道であれば荒れていることが多いでしょう。

 

サーキットにいけば、公道とは比較にならないぐらいスムースな路面になります。

 

同じアスファルトの路面といっても、その粗さ加減は千差万別。

 

コースに合わせて、空気圧を変えることは、当然と言えば当然なんですよね。

 

ベテランライダーが「道が悪いから空気圧低めにしよう」とか「サーキットだから高めでいくか」というのは、インピーダンス損失のことを経験から感じ取り、適正空気圧の決定要素として考慮しているということではないでしょうか。

 

最後に

 

タイヤの空気圧、相当に奥深い世界ではないでしょうか。

 

もし、私のように常に決まった空気圧を入れている方や規定内最大空気圧を入れている方は、いろいろな空気圧を試されることをおすすめします。

 

やみくもに試しても適正空気圧にたどり着くのに時間がかかるでしょうから、当記事で紹介したインピーダンスに関する記事のグラフから逆算するなり、Vittoriaのアプリを使うなりして、適正値に近いであろう空気圧を求めてから微調整を行うというアプローチがよいかと思います。

 

熱心に探究すれば、一切のコストをかけずに改善できる分野です。

 

最適な空気圧を求める旅を楽しむのも、ロードバイクの魅力の1つではないでしょうか。

 

タイヤのグリップ力に関して興味がある方は、こちらの記事も読んでみてください。

 

 

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